(1) 土木工学課程の教育理念

【特 色】

土木工学は、人々の生活基盤を支える重要な市民工学分野です。公共の施設やサービスに関与し、社会全体の機能を維持する役割を果たします。この分野では、施設の建設や維持管理だけでなく、その後の環境への影響も考慮される幅広い知識が求められます。土木工学は、「人」、「自然」、「モノ」が絡み合う社会基盤システムを対象としており、このシステムを総合的に捉える力と、共同体内での個人の責任と役割を認識する能力が要求されます。

また、近年では、通信技術やロボット工学、機械学習など、デジタルデータを活用した調査から設計、施工、維持管理に至るまで、高度な技術が要求されています。こうした変化に対応するためには、専門分野を超えたアプローチが重要です。

以上の理念に基づき、土木工学の対象である「人」、「自然」、「モノ」の関係性を深く理解し、社会基盤システムを包括的に捉える能力と、共同体内での個人の責任と役割を自覚できる人材を育成・輩出するために、従来の土木工学の教育プログラムを進化させる必要があります。このためには、他の専門分野との連携を強化し、新たな教育プログラムを構築することが重要です。

その実現に向けて求められることは、工学部における教育の3本柱(「分野横断教育」「研究を軸とした実践型教育」「課題発見・解決型人材教育」)を基盤とした教育プログラムの具体化であり、それを実践するための土台となる課程制の導入です。そこで、本学工学部に「土木工学課程」設置し、また課程の趣旨を明確にするため、課程内に「都市・環境コース」を設けます。これにより、予測困難な時代にあっても、土木工学の立場から諸課題を解決することができる有為な人材を育成します。

【教育研究上の目的】

グローバルな視点で持続可能な社会に貢献できる創造性豊かな土木技術者の育成を目指します。土木工学の対象である「人」、「自然」、「モノ」が相互に影響する社会基盤システムを大局的に捉える能力と集団の中での自己の役割と責任の自覚をもつ人材を養成します。
具体的には、卒業までに以下のような人材を養成することを教育研究上の目的とします。

  • 真に市民の立場に立った都市づくりを行える姿勢や能力を身に付けている。
  • 科学技術と土木工学の専門知識を基礎とした問題を分析、洞察、解決する能力を身に付けている。
  • 自然や社会の環境変化に対処する能力と創造力を身に付けている。
  • 日本のみならず国際社会での指導力と倫理観に基づく行動力を身に付けている。
【土木工学課程 ディプロマ・ポリシー】

土木工学は人間生活の基盤となる、あらゆる公共施設に関わる市民工学です。社会生活を成立させるための施設の建設とその維持管理、さらに建設後の自然や社会への影響などを考慮する幅広い知識が必要となります。土木工学の対象は「人」、「自然」、「モノ」が相互に影響する社会基盤システムです。土木技術者は、この社会基盤システムを大局的に捉える能力、そして集団の中での自己の役割と責任の自覚を要求されます。
土木工学課程 都市・環境コースでは、社会に貢献できる創造性豊かな土木技術者の育成を目指しています。これを実現するため、土木工学の対象である「人」、「自然」、「モノ」が相互に影響する社会基盤システムを大局的に捉える能力と集団の中での自己の役割と責任の自覚をもち、卒業時に以下の能力および素養を身に付けて卒業要件を満たした者に、学位を授与します。

  • 地球的かつ社会的視野から多様性を認識し多面的に物事を考える能力と素養
  • 持続可能な社会を創造するための役割を担う技術者としての素養
  • 工学と土木工学分野の基礎知識と幅広い専門分野の知識を活用して、制約条件や社会への影響も含め、現実の問題や社会の要求を理解・探求・解決する能力
  • 日本語と英語によるコミュニケーション能力とチームで仕事ができる能力
学修・教育到達目標
都市・環境コース
A 地球的かつ・社会的視野から多⾯的に物事を考える能⼒と素養を⾝に付けることができる。
A-1 ⾃然・⼈⽂・社会科学など、幅広く学問の英知を学び、地球的視野から多⾯的に物事を考える能⼒と素養を⾝に付けることができる。
A-2 ⾃ら⼼と⾝体の健康管理ができ、⼈類の幸福に貢献できる⼈材となるために、社会や他者の視点も含めた幅広い⼀般教養を⾝に付けることができる。
B ⼟⽊技術が社会と⾃然に対して⼤きな影響を与えることを理解し、技術者として、持続可能な社会を創造するための役割と責任を理解することができる。
C 数学や⾃然科学などに関する⼯学基礎知識を修得し、⼟⽊⼯学分野において応⽤・利活⽤できる。
D ⼟⽊材料系、構造⼯学系、地盤⼯学系、⽔⼯学系、⼟⽊計画系、⼟⽊環境系の専⾨基礎知識を体系的に修得することができる。
E 実験を通して⼟⽊⼯学分野における基礎理論の理解を深めるとともに、実験結果を解析・考察・説明することができる。
F 設計・演習・実習を通して専⾨分野における応⽤⼒を修得するとともに、⾃主的な学修の習慣を⾝に付けることができる。
G ⼟⽊⼯学における現実の問題について、⼯学・専⾨基礎知識を⽤いて理解・解決することができる。
H ⼯学・専⾨基礎知識を⽤いて⼟⽊分野における社会の要求を解決するための能⼒を⾝に付けることができる。
I 論理的な技術⽂章の作成、プレゼンテーションやディスカッションなどのコミュニケーション、英語による基礎的なコミュニケーションができる。
J 常に技術⼒の向上を⽬指し、⾃主的に、継続的に学修できる能⼒を⾝に付けることができる。
K 経済・社会・環境・時間・技術⾯などの制約条件のもとで、計画的に仕事を進め、まとめることができる。
【土木工学課程 カリキュラム・ポリシー】

土木工学課程では、ディプロマ・ポリシーに掲げた能力を身に付けるため、土木教育における社会科学の重要性を認識し、「社会科学を取り込み社会基盤システムの創造を担う人材を育む」よう、以下の方針に基づいてカリキュラムを構成して教育を行い、学修成果を評価します。

(1) 1、2年次の専門への入門・導入科目、人文社会系教養科目、工学部共通教養科目・体育健康科目
土木技術が社会と自然に対して与える影響、さらに持続可能な社会を創造するための役割と責任を理解し、地球的かつ社会的視野から多面的に物事を考える能力と素養を養います。
(2) 2年次中心の数理基礎科目、情報科目、土木基礎科目
自然科学などに関する工学基礎知識を修得し、土木工学分野において応用・利活用できる能力を養い、土木の専門基礎知識を体系的に学びます。
(3) 2、3年次の実習・実験・演習科目
土木工学分野における基礎理論の理解を深め、専門分野における応用力を修得し、自主的な学修の習慣を養います。
(4) 3年次中心の専門応用科目
土木工学における現実の問題について、工学・専門基礎知識を用いて理解・解決する能力と、社会の要求を解決するための能力を養います。
(5) 1、2、3年次の英語科目、ゼミナール、gPBL科目
論理的な技術文章の作成能力、プレゼンテーションやディスカッションなどコミュニケーション能力を養います。
(6) 3、4年次のキャリア科目、卒業研究
常に技術力の向上を目指し自主的に継続的に学修できる能力と制約条件のもとで計画的に仕事を進めまとめる能力を養います。

これらの学修成果は、各科目が重視する学修・教育到達目標および達成目標の項目に応じて、筆記試験、口頭試問、プレゼンテーション、レポート等で評価します。そして、学修成果が達成目標で設定したレベルに達すれば単位を付与します。

【土木工学課程 アドミッション・ポリシー】

土木工学課程では、土木教育における社会科学の重要性を認識し、社会科学をとり込み社会基盤システムの創造を担う人材として、時代の変化に対応できる高度専門技術者を育成するため、国内外を問わず以下のような資質や志を持つ人材を求めています。

  • 土木工学を学ぶにあたり、関連する教育分野に関する基礎学力を身に付けた人
  • 土木工学の技術とその基礎・応用に興味がある人
  • 社会の一員として社会と技術の関わりに向き合い、土木技術の発展と変革に貢献する志を持つ人
  • 実際に土木技術に触れ、自ら具体的に構造物の設計・施工・管理をすることに価値を見出す人
  • 社会のさまざまな活動に、多角的な視点を持って主体的に取り組みたいと考える人

上記に賛同し、本課程への入学を希望する人は、高等学校などにおいて以下の能力を身に付けておくことが望まれます。

  • (1)高等学校などの課程で学ぶ知識・技能・技術(特に外国語、数学、理科)
  • (2)思考力・判断力・表現力などの能力
  • (3)主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ能力

上記の能力を多面的・総合的に評価するため、工学部のアドミッション・ポリシーを指針とした入学者選抜を実施します。

  • 一般選抜の前期・後期・全学統一日程、英語資格・検定試験利用方式
    (1)及び記述式試験で(2)を評価します。
  • 一般選抜の大学入試共通テスト利用方式
    多科目の成績により(1)及び(2)を評価します。
  • 総合型選抜
    筆記試験、外部検定試験などにより(1)及び(2)を評価し、面接で(1)及び(2)、(3)を総合的に評価します。
  • 学校推薦型入学者選抜
    調査書で(1)及び(2)を評価し、面接で(1)及び(2)、(3)を総合的に評価します。