4 情報・通信工学課程
(1) 情報・通信工学課程の教育理念
【特 色】
20世紀初頭にコンピュータが生まれてから、さまざまなコンピュータに関わる技術が開発されています。近年では、パーソナルコンピュータや多様なIoTデバイスが普及し、私たちの生活・産業のあらゆる面を支えています。これは、コンピュータを使って生み出された情報が人の社会において重要な要素であるからです。
また、通信には、音や光を使って遠方に情報を伝えることなどから始まり長い歴史がありますが、20世紀中盤にコンピュータ間をつなぐネットワークが登場し、さらにその後にインターネットが普及してからその重要性が飛躍的に高まっています。適切な通信を実現するには物理レベルからアプリケーションレベルまで様々な知識・技術が必要となります。
情報通信工学は、情報の処理や伝達に関連する技術を取り扱う学問です。この分野には、無線通信や光通信などの情報通信ハードウェア技術、情報通信ネットワークの構築技術、画像や音声などのマルチメディア技術、ヒューマンインタフェース技術、そしてデータサイエンスを含むソフトウェア・データ解析技術が含まれます。
さらに、音響工学やセンサ工学、生体工学も広義において情報通信工学と密接な関わりを持つ分野です。
情報工学は、コンピュータを活用して情報を高度に処理する技術を扱う学問です。この分野には、ハードウェア技術やソフトウェア技術、ヒューマン・コミュニケーション技術、データベース・ネットワーク技術を中心にIoT、オペレーティングシステム、プログラミング言語、人工知能、自然言語処理、データサイエンス、VR、CG、ヒューマンインタフェース、量子コンピュータなどのコンピュータに関わる諸技術が含まれます。
情報通信工学分野・情報工学分野の発展は目覚ましく、基礎をしっかり身に付け新しく生まれてくる技術に対応でき、また、様々な状況で技術を適切に応用できる技術者が必要となります。
情報・通信工学課程ではこのような「情報」に関連した二つの学問分野に対応し、情報通信工学を学ぶ「情報通信コース」と情報工学を学ぶ「情報工学コース」を課程内に設置しています。
情報通信コースでは、情報通信システムとネットワークの本質をハードウェア・ソフトウェアの両面から体系的に理解し、その知識と技能を応用して課題を解決できる能力および豊かで持続可能な社会の実現に貢献する実践力を身に付けます。
情報工学コースでは、情報工学の基本的な考え方と基礎技術、また社会に及ぼす影響や有効性を考えながらコンピュータを用いたシステムの設計・実装ができる能力とこれを創造的に応用できる能力を身に付けます。
【教育研究上の目的】
コンピュータと情報通信を利用して人間の社会と生活を豊かにする技術を体系的に広く学ぶことを教育の目的とし、時代に左右されない技術の基盤を支える普遍的な基礎学力を身に付けた技術者を養成します。
具体的には、卒業までに以下のような人材を養成することを教育研究上の目的とします。
- 技術の基盤を支える数学と物理などの自然科学の基礎学力を身に付けている。
- 情報・通信工学の基本的な考え方と基礎技術、およびそれらを創造的に応用して課題を解決する能力を身に付けている。
- 情報技術・情報通信技術が社会に及ぼす影響や制約条件を考えながらシステムの設計・実装を行うことで課題を解決する能力を身に付けている。
- 幅広い教養と豊かな人間性を基に、地球的視点からの広い視野を持って課題に自律的に取り組み探求する能力を身に付けている。
- 技術者として必要な他者とのコミュニケーションの能力を身に付けている。
【情報・通信工学課程 ディプロマ・ポリシー】
情報・通信工学課程では、教育研究上の目的に定める人材を育成するため、卒業時に以下の能力および素養を身に付けて卒業要件を満たした者に、学位を授与します。
- 技術の基盤を支える数学や物理などの自然科学の基礎学力、専門的知識、横断的知識を備え技術的課題を解決できる能力
- 情報・通信技術が社会に与える影響や世界と社会の多様性を考慮しつつ、高い倫理観を持ち、協力して課題解決を行うためのコミュニケーション力を持つ理工学人材として活躍できる能力
以上の能力に加えて、
情報通信コースでは、
- 情報通信システムとネットワークの本質をハードウェア・ソフトウェアの両面から体系的に理解し、その知識と技能を応用して課題を解決できる能力
- 豊かで持続可能な社会の実現に貢献する実践力
情報工学コースでは、
- 情報工学の基本的な考え方と基礎技術、また社会に及ぼす影響や有効性を考えながらコンピュータを用いたシステムの設計・実装ができる能力
- 上記能力を創造的に応用できる能力
を、それぞれ身に付けます。
学修・教育到達目標
A | 数学、自然科学の考え方と理論を理解し、情報処理技術とともに課題解決に応用することができる。 | ||
A-1 | 技術の進展と人間・社会の関わり合いを理解することができる。 | ||
A-2 | 工学全般の基礎となる物理法則を理解することができる。 | ||
A-3 | 数理法則の理解に基づいて工学的センスを身に付けることができる。 | ||
A-4 | 情報処理の基礎知識を広く活用することができる。 | ||
B | 情報通信システムとネットワークについてのハードウェアとソフトウェアの両面からの体系的な理解をすることができる。 | ||
B-1 | 情報通信工学に共通する基礎的な概念を習得することができる。 | ||
B-2 | 課題解決のために有効な計画を策定してデータを正しく取得・解析することができる。 | ||
B-3 | 最先端のシステムやネットワークに対応できる高度な専門知識や技能を習得することができる。 | ||
C | 情報通信工学の知識と技能を課題解決に応用することができる。 | ||
C-1 | 自主的に重要課題を見つけ、自ら探求心を高めることができる。 | ||
C-2 | 課題解決に向けた計画を立案し、進捗状況に応じて適宜計画を修正しながら目標を達成することできる。 | ||
D | 文書作成や発表などの技術者としてのコミュニケーションができる。 | ||
D-1 | 説得力のある文書報告や口頭発表、技術討論を行うことができる。 | ||
D-2 | 専門分野の英文を読解・作成するなど国際コミュニケーションの基礎を習得することができる。 | ||
E | 情報通信工学の社会の発展への関わりを理解し、社会に貢献する工学者としての倫理観を身に付けることができる。 | ||
F | 社会のニーズに対して技術課題を主体的に発見し、工学分野における分野横断的な知識も活用しつつ、計画的・継続的に取り組んで課題を達成することができる。 | ||
G | さまざまな文化の理解を踏まえてグローバルな視野で発想し、チームの中で自分の役割を担って課題に取り組むことができる。 |
情報工学コース
A | 数学、自然科学、情報利用技術を問題解決に応用することができる。 | |
B | ソフトウェア、ハードウェア、ヒューマン・コミュニケーション、データベース、ネットワーク等などの情報技術に関する基礎知識とその応用能力を身に付けることができる。 | |
B-1 | コンピュータサイエンスの数理的基礎と問題分析のスキルを身に付けることができる。 | |
B-2 | コンピュータサイエンスの各分野の基礎知識とその応用能力を身に付けることができる。 | |
C | 与えられた要求に対して、コンピュータを用いたシステムやプログラムを設計・実装して評価することができる。また、チームの一員として他のメンバーと協調してそれらの作業を行うことができる。 | |
D | 情報技術が社会に及ぼす影響、情報技術者としての倫理、情報セキュリティに関する理解を得ることができる。 | |
E | 種々の文化の理解に基づき社会的・地球的視点から多面的に物事を考える能力を身に付けることができる。 | |
F | 技術者としてのコミュニケーション能力を身に付けることができる。 | |
F-1 | 技術的資料や報告書の作成能力、口頭発表や討論を行う能力を身に付けることができる。 | |
F-2 | 英語による基礎的なコミュニケーション能力を身に付けることができる。 | |
G | 技術的課題に対してさまざまな工学分野の知識を関連付けながら主体的に取り組み、継続的に学修する能力を身に付けることができる。 |
【情報・通信工学課程 カリキュラム・ポリシー】
情報・通信工学課程では、ディプロマ・ポリシーに掲げた能力を身に付けるため、以下の方針に基づいてカリキュラムを構成して教育を行い、学修成果を評価します。
- (1)1年次の専門科目、1、2年次の基礎・教養科目
- 各専門分野に共通する基礎知識やスキルの修得を目指します。
- (2)2年次の専門科目
- 各専門分野の基礎となる初歩的な専門科目を修得し、より高度な専門科目の学修に備えます。
- (3)3、4年次の専門科目、卒業研究
- 相対的に専門の選択必修科目などの割合を増やし、学生が志向する専門領域に重点を置いた学びを促します。これらの専門科目は課題解決型人材教育、研究を軸とした実践型教育、分野横断的知識を備えるための工学技術者教育を目指すもので、研究室で指導を受ける卒業研究へつながります。
- (4) アクティブラーニング科目、グローバルPBL科目
- ディプロマ・ポリシーと学修・教育到達目標に掲げる知識とスキルを修得するため、講義科目で原理と理論を学び、演習科目を中心としたアクティブラーニングで理解を深めます。また、学年を問わず、グローバルPBL(課題解決型学習)プログラムへの参加でグローバル人材としての経験を積みます。
これらの学修成果は、各科目が重視する学修・教育到達目標および達成目標の項目に応じて、筆記試験、口頭試問、プレゼンテーション、レポート等で評価します。そして、学修成果が達成目標で設定したレベルに達すれば単位を付与します。
以上の方針のもと、
情報通信コースでは、無線や光などによる情報伝達の原理とそれを具現化する装置・回路、情報伝達の品質・信頼性を高める通信ネットワークの方式、情報に基づいたコンピュータでの判断や予測などの知的処理、ヒューマンインタフェースなどの技術を理解し、これらを複合的に用いて情報通信の高度化と新しい価値の創出につながる技術へ展開させる力を養います。
情報工学コースでは、「コンピュータを利用して人間の社会と生活を豊かにする技術」を理念とし、ソフトウェア、ハードウェア、人工知能、ヒューマン・コミュニケーション等の情報技術の原理を理解し、プログラミングにより表現することで最先端技術の発展・創造を推進する力を養います。
【情報・通信工学課程 アドミッション・ポリシー】
情報・通信工学課程では、コンピュータ・情報通信技術の学んだ知識と技能を活かして社会と生活を豊かにし、安心・安全な社会の実現に貢献できる人材を育成するため、国内外を問わず以下のような資質や志を持つ人材を求めています。
- 数学、物理、化学の原理の本質を理解した上でそれを発展的に応用できる力を持ち、外国語のリーディング・ライティング・ヒアリングの力をバランスよく高度に修得している人
- 本質の理解を伴った確かな知識を用いて、物事を多面的に見ながら総合的に判断し、一定の結論を引き出せる人
- 相手の知識・背景・立場に応じて、考えていることを分かりやすく論理的に伝えられる人
- 技術の動向や身の周りで起きている現象に関心をもち、それらに対して多くの人と協働しながら世の中をより良くしたいという意欲にあふれる人
以上の資質を備えていることに加えて、以下のような人材を求めています。
情報通信コースでは、
- 情報社会を支えるシステムとしての情報通信技術の原理を理解し、それを踏まえて社会の抱える課題を解決する技術、新たな価値をもたらす技術の創造に意欲的に取り組む人
情報工学コースでは、
- 情報技術やその原理となるコンピュータサイエンスへの関心と、プログラミングを中心としたソフトウェア技術の習得・研鑽への意欲を持ち、それらを自在に駆使して人間の活動に新しい価値を創造することを通じて社会貢献をなそうと志す人
上記に賛同し、本課程への入学を希望する人は、高等学校などにおいて以下の能力を身に付けておくことが望まれます。
- (1)高等学校などの課程で学ぶ知識・技能・技術(特に外国語、数学、理科)
- (2)思考力・判断力・表現力などの能力
- (3)主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ能力
上記の能力を多面的・総合的に評価するため、工学部のアドミッション・ポリシーを指針とした入学者選抜を実施します。
- 一般選抜の前期・後期・全学統一日程、英語資格・検定試験利用方式
(1)及び記述式試験で(2)を評価します。 - 一般選抜の大学入試共通テスト利用方式
科目の成績により(1)及び(2)を評価します。 - 総合型選抜
筆記試験、外部検定試験などにより(1)及び(2)を評価し、面接で(1)及び(2)、(3)を総合的に評価します。 - 学校推薦型入学者選抜
調査書で(1)及び(2)を評価し、面接で(1)及び(2)、(3)を総合的に評価します。