(1) 機械工学課程の教育理念

【特 色】

機械工学は、様々な「もの創り」を研究対象とした学問です。自然界の法則や原理を巧みに利用した「もの創り」を通じて新たな価値を生み出すことにより、機械工学は安心安全な社会の構築と豊かな生活の実現に貢献してきました。このような「もの創り」の視点に立てば、機械工学の基盤となる学理は、「ものを構成する材料の性質」「ものの運動や活動のメカニズム」「有用な機能を生み出すためのエネルギー」などに関連した自然科学、とりわけその中核を担う「力学」であることが理解できます。さらに、具体的な「もの」を創造するためには、設計、加工、制御といった機械工学固有の設計科学が必要です。すなわち、機械工学の学術的な基幹は、力学と設計科学の両者によって作り上げられていることがわかります。

一方、現代の機械工学は、情報技術、生命科学、ナノテクノロジーなどと結びつきながら人間の知的活動の一部を補完あるいは代替する領域にまでその対象を広げつつあります。今後、機械や機械システムの多様化が進めば、異分野との連携や融合によって先進的な機械や技術の創出に一層の拍車がかかることが予想されます。以上のような観点から、あらためて機械工学を俯瞰すると、機械工学が社会の課題解決に取り組む手段として二つのアプローチを考えることができます。

第一のアプローチは、機械工学の基幹を構成する自然科学を掘り下げ、必要であれば力学的な思考に基づいて理論を再構築することにより、未知の課題に取り組む方法です。例えば、材料力学や固体力学などの力学解析手法に基づく高性能な機械構造物の設計、あるいは熱・流体力学の基礎理論に基づいたエネルギー機器や輸送機器の高性能化などは、力学的観点から工学問題の解決を目指す代表的な研究例と言えます。

第二のアプローチは、異なる領域に視野を広げ、広範な知識や技術を取り入れながら、機械工学の枠組みに固執しない先進的な技術や機能を生み出すことによって、課題解決を図る方法です。例えば、様々なスケールの物理現象を解明して先進的な機械システムの構築に応用するためのメカニカルサイエンスに関する研究、機械工学と電子工学、制御工学などを融合して新たなサービスを開発するためのロボティクス・メカトロニクスに関する研究などが挙げられます。

機械工学課程ではこのような二つの方向性を重視することにより、第一のアプローチに対応した「基幹機械コース」と第二のアプローチに対応した「先進機械コース」を課程内に設置し、それぞれのコースの特色に応じたカリキュラムを展開します。

【教育研究上の目的】

科学技術の現状や社会の要望をグローバルな視点で捉え、環境や感性との調和に配慮しながら、機械工学の学理を用いて有用な機械やシステムを創成できる人材を養成します。
具体的には、卒業までに以下のような人材を養成することを教育研究上の目的とします。

  • 機械工学に関わる数理知識を用いて機械のメカニズムを理解する能力と、それらを活用して有用な機能を創成できる設計能力を身に付けている。
  • 社会や環境との関わりに配慮して機械工学の必要性を常に見直すことができる倫理観および責任感を持ち、グローバルな視点から多面的に科学技術を捉える能力を身に付けている。
  • 工学的な問題に対して機械工学の見地から取り組むべき事柄を整理し、与えられた条件の下で様々な分野の知識を関連付けて課題解決に適用できる能力を身に付けている。
  • 地球的視野から科学技術の現状を捉えて能動的に考え分析し、社会の発展に向けて行動することができる研究推進能力を身に付けている。
  • 多様性を尊重し他者と協調して活動できる能力と、意思疎通を図りながら自らの判断や意見について説明できるコミュニケーション能力を身に付けている。
  • 技術的課題の探求に関心を持ち、情報環境等を利用して継続的に自己学修できる能力を身に付けている。
【機械工学課程 ディプロマ・ポリシー】

機械工学課程では、教育研究上の目的に定める人材を育成するため、卒業時に以下の能力および素養を身に付けて卒業要件を満たした者に、学位を授与します。

  • 機械工学に関わる数理知識を用いて機械のメカニズムを理解する能力と、それらを活用して有用な機能を創成できる設計能力
  • 社会や環境との関わりに配慮して機械工学の必要性を常に見直すことができる倫理観と責任感を持ち、グローバルな視点から多面的に科学技術を捉える能力
  • 工学的な問題に対して機械工学の見地から取り組むべき事柄を整理し、与えられた条件の下でさまざまな分野の知識を関連付けて課題解決に適用できる能力
  • 地球的視野から科学技術の現状を捉えて能動的に考え分析し、社会の発展に向けて行動できる研究推進能力
  • 多様性を尊重し他者と協調して活動できる能力と、意思疎通を図りながら自らの判断や意見について説明できるコミュニケーション能力
  • 技術的課題の探求に関心を持ち、情報環境などを利用して継続的に自己学修できる能力

以上の能力に加えて、
基幹機械コースでは、

  • 機械工学の体系的な知識を用いて、社会の問題を解決できるエンジニアリング・デザイン能力
  • 機械システムの高度化に貢献できる研究開発能力

先進機械コースでは、

  • 機械工学の学理を応用し、多様な分野を含む融合領域の発展に、広く貢献できる研究開発能力

を、それぞれ身に付けます。

学修・教育到達目標
基幹機械コース
A 文化・芸術・歴史・政治経済などに基づく大局的な視野と倫理的な視点から、工学と社会の関わりを考察することができ、グローバル社会において多様な人々と意思疎通を図ることができる。
B 機械工学の専門知識を必要とする協同作業において、他者の意見を理解し自己の役割を果たしながら、相互にコミュニケーションを取って目標を実現することができる。
C 自然科学の原理から基本的な物理現象を数学的に導くことができ、機械の設計や性能評価に必要な技術計算、情報処理を正確に行うことができる。
D 自然科学の法則に基づいて機械の運動機構や動特性、構造や強度、物質・運動量・エネルギーの流れなど機械工学の基盤技術に関わる物理現象を理解し、現象の予測や解析を行うことができる。
E 機械を製作して運用するために必要な工学特有の手法(計測、制御、設計、加工など)に習熟し、それらを問題の状況に応じて適切に使うことができる。
F 産業界や社会の要請を把握して解決するべき課題を設定し、さまざまな工学分野の知識を関連付けながら設計生産技術を活用することで、立案した構想に従って研究を進め課題を解決することができる。
G 技術的課題に対して自ら積極的に追究しようとする探求心を持ち、さまざまな機会を利用して継続的に自己学修することができる。

先進機械コース
A 文化・芸術・歴史・政治経済などに基づく大局的な視野と倫理的な視点から、工学と社会の関わりを考察することができ、グローバル社会において多様な人々と意思疎通を図ることができる。
B 機械工学の専門知識を必要とする協同作業において、他者の意見を理解し自己の役割を果たしながら、相互にコミュニケーションを取って目標を実現することができる。
C 自然科学の原理から基本的な物理現象を数学的に導くことができ、機械の設計や性能評価に必要な技術計算、情報処理を正確に行うことができる。
D 機械工学の基盤技術に関わる物理現象の本質を数理的に理解することができる。機械を設計・製作・運用するために必要な手法(計測、制御、設計、加工など)に習熟し、それらを実際の工学的問題に適用することができる。
E 多様な分野の知識を積極的に取り入れ、機械工学の基礎知識を多方面に柔軟に応用して、融合領域の問題に適用することができる。
F 産業界や社会の要請を把握して解決するべき課題を設定し、機械工学の学理を応用して異分野を含む融合分野で革新的な機能を創成することができる。
G 技術的課題に対して自ら積極的に追究しようとする探求心を持ち、さまざまな機会を利用して継続的に自己学修することができる。
【機械工学課程 カリキュラム・ポリシー】

機械工学課程では、ディプロマ・ポリシーに掲げた能力を身に付けるため、以下の方針に基づいてカリキュラムを構成し、科目区分および配当年次に沿って体系的に教育を行い、学修成果を評価します。

(1) 1、2年次の基礎・教養科目
機械工学の専門知識を修得するために必要となる自然科学の基礎知識、論理的な説明や意見交換を行うための語学力を養成し、技術者として適切な判断ができる倫理観を備えた豊かな人間を育成します。
(2) 1、2年次の専門科目
必修4力学(材料力学、流体力学、熱力学、振動工学)を開講し、機械工学の理論体系に沿って工学的思考力を育成します。
(3) 2、3年次の専門科目
機械の設計や生産管理など設計科学の基礎となる機械設計製図、制御工学、加工学などを実習科目も含めて開講し、機械工学の基礎理論を工学問題へ適用する能力を育成します。
(4) 3、4年次の卒業研究
卒業研究1〜4を中心に研究を基軸とした体験的学修を積み重ねることで、様々な分野の知識を活用した課題解決力と、研究を進めるために必要なチームワーク力、コミュニケーション能力、自己学修力を育成します。

上記のような能力の修得に向けて知識の定着と活用を促すため、講義・演習・事前事後の時間外学修を適切に組み合わせた教育、実験やものづくりを通じた体験教育を実施します。

これらの学修成果は、各科目が重視する学修・教育到達目標および達成目標の項目に応じて、筆記試験、口頭試問、プレゼンテーション、レポート等で評価します。そして、学修成果が達成目標で設定したレベルに達すれば単位を付与します。

以上の方針のもと、
基幹機械コースでは、力学を基盤とする設計理論・スキルの修得に重点を置いてカリキュラムを編成しています。機械システムの創成や高度化、高性能化に寄与できる応用力を育成し、合わせて持続可能な社会の実現に貢献できる能力や俯瞰的な視野を養います。
先進機械コースでは、機械工学に加えて幅広い分野の科目を学修できるカリキュラムを編成しています。革新的な機能を持つ機械システムを創成できる応用力を育成し、合わせて持続可能な社会の実現に多方面の分野から貢献できる能力と視野を養います。

【機械工学課程 アドミッション・ポリシー】

機械工学課程では、他者と協力し自己研鑽に励みながら、広い視野で科学技術の現状を捉えて、社会のさまざまな未解決問題に機械工学的手段で取り組める技術者を育成するため、国内外を問わず以下のような資質や志を持つ人材を求めています。

  • 幅広い機械工学の知識と技術によって、世界に貢献しようとする意志を備えた人
  • 数学と物理を中心とする自然科学の基礎学力を身に付けた人
  • 日本語による十分なコミュニケーション能力と読解力、英語による基礎的な表現力と読解力を持ち、国際的な視野の獲得に向けて積極的に行動できる人
  • 公共性と倫理観を有し、主体性と計画性をもって自己の能力研鑽に励める人

以上の資質を備えていることに加えて、以下に関心・意欲のある人を求めています。
基幹機械コースでは、

  • 機械工学がもたらす社会的価値
  • ものづくりに必要な設計能力を取得して、メカニズムの先進化を目指すこと

先進機械コースでは、

  • 機械工学に加えて幅広い分野を学修する意欲
  • 革新的な機能の創成を目指す工学・技術

上記に賛同し、本課程への入学を希望する人は、高等学校などにおいて以下の能力を身に付けておくことが望まれます。

  • (1)高等学校などの課程で学ぶ知識・技能・技術(特に外国語、数学、理科)
  • (2)思考力・判断力・表現力などの能力
  • (3)主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ能力

上記の能力を多面的・総合的に評価するため、工学部のアドミッション・ポリシーを指針とした入学者選抜を実施します。

  • 一般選抜の前期・後期・全学統一日程、英語資格・検定試験利用方式
    (1)及び記述式試験で(2)を評価します。
  • 一般選抜の大学入試共通テスト利用方式
    多科目の成績により(1)及び(2)を評価します。
  • 総合型選抜
    筆記試験、外部検定試験などにより(1)及び(2)を評価し、面接で(1)及び(2)、(3)を総合的に評価します。
  • 学校推薦型入学者選抜
    調査書で(1)及び(2)を評価し、面接で(1)及び(2)、(3)を総合的に評価します。